この病気を診断するには、脳神経内科(旧呼称は神経内科)を受診する必要があります。これまでの症状と経過、そして家族に発症した人がいるかどうかでおおよその診断がつけられます。また、CTやMRIなどの画像検査で、より正確に診断されます。その他、家族に発症者がいない場合などは、遺伝学的検査で確実に診断されます。
遺伝形式と遺伝学的検査
HDは常染色体顕性遺伝といって、両親のどちらかがHDを発症している場合、その親からHDの遺伝子変異がある染色体を受け継いだ子どもは、病気も受け継ぐことになります。原因となる遺伝子(IT-15)は、第4染色体にあり、CAGという塩基配列のリピート数(繰りかえしの数)が通常の場合より長くなっていることが特徴です。
もし、この遺伝子を持っていれば、人生のいつになるかはわかりませんが、将来的に発症する可能性が極めて高くなります。遺伝子を受け継ぐかどうかに男女差はありません。約1割の患者は20歳以下で発症しており、その多くは父親からの遺伝で、親よりも先に発症することがあります(表現促進現象)。こうしたタイプを若年性ハンチントン病(JHD)と呼びます。
現在、血液から遺伝子を調べることによって、HDになる遺伝子を持っているかどうかを調べることができるようになり、まだ症状のない時点からでも、将来発症するかどうかを知ることができます(発症前遺伝学的検査)。
結果のほとんどは、陽性(HD遺伝子の変異を持っている)、もしくは陰性(HD遺伝子に変異がない)という形で伝えられますが、はっきり結果が出ず、不明という場合もあります。
HDの場合、現時点では早めに知っても、発病を防いだり、遅らせたりする方法がありません。結果がどちらであっても、本人だけでなく家族や周囲の人々に大きな影響を与えることになるので、病気についての正しい知識と支援の仕組みを知り、利益と不利益を十分に考える必要があります。
発症前であっても、病気の症状が出てきてからであっても、遺伝学的検査には専門的な実施体制が不可欠です。実施体制の整っていない医療機関では、遺伝学的検査の実施を断るところもあります。他方、実施体制が整っていなくても、安易に実施するところもあるようです。焦る気持ちを抑えながら、実施体制が整っており、患者や家族の気持ちと向き合い、慎重に話し合ってくれる医療機関を選びましょう。
発症前遺伝学的検査について
すでに発症している人が確定診断のために検査を受けることと、まだ症状のない人が発症前に検査を受けることでは、まったく意味が違ってきます。発症前遺伝学的検査は国内でも受けられますが、まだ治療法のない疾患を告げられるということがどういうことを意味するのか、今一度、よく考える必要があります。日本では、第三者による遺伝情報の悪用や差別を罰する法律は整備されておらず、民間の医療保険や生命保険の加入問題や家族の心理的な負担はあまりにも重いものです。発症前遺伝学的検査を受けるかどうかを決めるのは、発病のリスクを持っている本人の自発的な意思でなければなりません。また、第三者は、「家族のため」、「あなた自身のため」、「会社のため」などの理由で、本人へ安易に勧めてはいけません。詳しいことを知りたい場合には、遺伝カウンセリングを実施できる医療機関へ行くことをお勧めします。
検査を受けた人の中には、結局は検査が不安を取り除かなかったと感じている人もいます。陰性の結果が出た人(将来的に発症の可能性がない人)でも、兄姉姉妹やイトコなどの親族には、まだ発症の可能性があり、自分だけが助かってしまったという罪悪感に悩む人もいます。
考えてみて下さい、あなたが発病するかもしれない可能性を
知らないままでいることを選び、あるがままの人生を生きる
知ることを選び、その上で人生設計を立てていく
どちらを選べば、
自分にとって前向きな人生を生きられる?
告知について
HDを自分の子どもに伝えることは、たいへん勇気のいることです。どの時点で、どのように伝えるのか、子どもの性格や年齢、また周囲の状況によっても変わってくると思います。
結婚相手に自分の家系が遺伝病を持っていることを告げるということも、たいへん辛いことです。しかし、だからといって黙ったままでいることはできません。同じ立場の人同士で相談することや、このような問題を話せる専門のカウンセラーに相談することをお勧めします。