「神経変性疾患領域における基盤的調査研究」班編
ハンチントン病と生きる ―よりよい療養のためにー Ver.2
ハンチントン病研究グループ 2017 年 2 月改訂版 より転載
https://plaza.umin.ac.jp/neuro2/huntington.pdf
緊張すると不随意運動がより強くなりますので、ゆったりした環境で、座って行いましょう。ヘッドの小さな小児用歯ブラシやタフトブラシも有効です。
飲み込まずにうがいができるようでしたら、手早くブラッシングしたあと、フッ素入りうがい薬を寝る前に使うことも有効です。
うがいが難しい場合は歯磨き粉の使用は避けて、歯ブラシをフッ素入りうがい薬で湿らせて磨きます。むせやすい場合は、吸引できる歯ブラシも市販されています。(この場合は吸引器が必要です)
我慢ができないのはこの病気の症状の一つです。また、不随意運動が激しいとかなりカロリーを消費するので、他の人よりもおなかがすくことが多いのも確かです。お食事の時はできるだけすぐに食べられるものを用意しておいてください。 また、詰め込みなどによる窒息を避けるために、小出しに食物を渡して下さい。
この病気だからといって、特別な心配をされることはありません。一般的に胃ろうのチューブやボタンと皮膚が接する部分がすれてただれてしまうことがあります。着替えのときなどに胃ろうの部分を見て、赤くなったりしているようでしたら、早めに訪問看護師や主治医に相談してください。
ご本人が胃ろうの部分が気になって触ってしまったり、不随意運動のために 胃ろうのチューブをひっぱってしまったりすることで抜けてしまうことがあります。 食事の投与中は、チューブ類が手の届く範囲で空中に浮いていない様に工夫します。 胃ろうのすぐそばで服の合わせ目から外に出すのではなく、首から服の外に出す・ 腰から服の外に出す等の工夫が有効かもしれません。また、チューブタイプをご使用中の場合は、食事の投与中以外は服の外に出たままにならない様に工夫します。 チューブを収納するポケットや小さな穴がついている胃瘻チューブ抜去防止用の腹巻も市販されています。ボタンタイプの場合には、投与中以外では、あまり抜去の 心配は要りません。(胃ろうを増設した場合の、注意点などについての小冊子もあります。必要に応じて主治医にご相談下さい。)
事前指示書には食事がとれなくなった場合に胃ろうを造設するか、呼吸が困難になったときに、気管切開や呼吸器をつけるか、などを書くことが一般的ですが、 自分の意志を伝えられなくなった場合には、医療をどのように進めて欲しいか、終末期にはこうしてほしいという希望があれば記録しておくとよいと思います。ただ し、多くの方は、その時その時に希望される内容は変化しますし、経過のなかで最 初とは全く逆の希望になることも少なくはありません。そのため、現時点での考えとして記録した年月日を記入し、もし考え方が変わったら、また新たに日付をつけ て書き加えるようにしましょう。考えが変わっていくことは、特別なことではあり ません。躊躇せずに書き換えていきましょう。日付の最も新しいものが最も今のあ なたの希望に近いものだと判断されます。なお、記録しておく場合には、お一人だ けにとどめておかず、ご家族、主治医とも共有しておくと、あなたの意思に沿った医療を受けられる可能性が高まります。
ハンチントン病は指定難病の対象疾患ですので申請が可能です。これには現時点では必ずしも遺伝子診断は必要ではありません。不随意運動のために一人での歩行が困難になった場合や、食事など身の回りのことをするのに介助が必要な場合には、身体障害者手帳の取得が可能です。 介護保険については、ハンチントン病という病名のみでは40歳以上からサー ビスを受けられる2号保険者にはなれませんが、認知機能障害がある場合には若年性認知症として、申請が可能です。自立支援法も障害の程度により利用可能です。 相談支援事業、コミュニケーション支援、日常生活用具給付、移動支援等があります。介護保険との併用も可能です。(それぞれの制度の概略は項目6を参照してください) 小児の場合には知能検査を受けて、その結果により療養手帳(愛の手帳)の申請をして下さい。
この項目に関する協力者
国立精神神経医療研究センター病院精神科 有馬邦正、外科 三山健司、神経内科 山本敏之、リハビリテーション科 小林庸子、歯科 福本裕、患者会のみなさん、国立病院機構相模原病院リハビリテーション科言語聴覚士 池山順子