HDファミリーが子どもを授かる方法
子どもを授かる:今回の記事(過去の記事を2024年にふさわしくアップデートしたもの)では、アットリスクの人たちがHDの心配がないこどもをもうけるのに役立つと思われる生殖技術を特集して紹介します。
原文(英文)はこちら
執筆:ベトニー・チルズ、ナヤナ・ラヒリ博士 編集:エド・ワイルド教授、レイチェル・ハーディング博士 初出稿 2011年7月2日
HDBuzzで紹介された、HDを受け継がない子どもを授かるための生殖医療技術に関する記事を翻訳して掲載しました。日本国内では一般的ではない検査方法も掲載しています。
(2024年9月 JHDN事務局)
JHDNとしてはこの記事で説明されている検査や診断について「推奨する」「推奨しない」という立場ではなく、皆さんと学びながら、その選択や決断を見守っていきたいと思っています。
アットリスクの人たちの場合、HDを受け継ぐ心配のある子どもを授かることが家族計画にまつわる意思決定を著しく困難にすることがあります。今回の記事では、利用可能な選択肢について解説し、HDの影響下にある家族に現代の生殖科学がまさに今どのように役立つかを説明します。
内容についての注意
この記事では生殖に関する諸問題、難しい選択、医学上の手技を扱っていますが、そのなかには妊娠中絶も含まれます。この記事で扱うすべての技術がどこでも利用可能であるとは限りませんし、国によっては費用が高額になる場合もあります。したがって、こうした技術のいずれかについて検討しているならば、専門の遺伝カウンセラーに個々の場合に応じたアドバイスを求めることをお勧めします。早く相談をすれば、それだけ選択の幅も広がります。
将来子どもへのHDの遺伝を回避するためにアットリスクの人たちが利用できる選択肢はいくつかあります。
はじめに
HD患者やアットリスクの人たちの多くが、次世代にHDを受け継がせることなく子どもを授かる方法があるのか知りたいと思っています。端的に言って答えはイエスです!
遺伝子医療科学や生殖医療技術のおかげで、将来子どもがHDを発症するリスクのないようにするためにアットリスクの人たちが利用できる選択肢はいくつかあります。すでに検査を受けてHDの遺伝子伸長のキャリアである人たちもそうですが、自分はHDの遺伝子検査を受けないと決めている人たちにも選択肢はあります。
先ずは重要なことから:今まで通りでもいいのです
この記事では主としてHDの心配のない子どもをもうけるための選択肢に焦点をあてていますが、大切なことを確認しておきましょう。遺伝子検査など一切なしに子どもを授かるというのもアットリスクの親として十分ひとつの選択肢です。
HDBuzzのどの記事からも分かるように、科学者たちはHD治療法の発見に向かって着実に前進しています。確かに何かを保証することも明確なスケジュールを約束することもできませんが、HDが治療可能な病気になった世界にアットリスクの子どもたちが生を享ける時が来ることを私たちは確信しています。
さらに、生まれる子どもがHDの遺伝子伸長を受け継がず、したがってHDを発症しないという可能性は常に存在します。
子どもが確実にHDの心配がないようにしたいと思っていながら、住んでいるところや経済的理由や宗教的信条などのため、選択肢が利用できないという人もいるでしょう。
アットリスクの子どもをもうけるということはHD当事者や関係者の間でも議論や論争の的となり得る事柄です。他の人が下した決断に同意できないという場合もあるでしょうが、自ら決断を下した人は誰であれ尊重される権利を有するということは銘記すべきでしょう。
ハンチントン病青年組織(Huntington Disease Youth Organization)では、HDや遺伝的リスクについて子どもたちにその年齢に応じた適切な話をするのに役立つ素材が利用できます。
・小さい子どものため
・ティーンエイジャーのため
・青年のため
何がなんでも、HDを受け継がせるリスクは一切避けたいと思う人もいるでしょう。そういう場合には遺伝子解析技術の出番となります。こうした選択肢はアットリスクであるのがあなた自身であろうがあなたのパートナーであろうが利用可能です。
私にふさわしい遺伝子検査の選択肢は?
遺伝子検査のおかげで、妊娠中に胎児を対象に、あるいは生殖医療施設において胚の段階で、HDのリスクがあるかないかを知ることができます。
妊娠中の胎児を検査することを出生前診断といいます。検査室における胚の検査は体外受精(in-vitro fertilization: IVF)の一環として行われ、着床前診断(pre-implantation genetic testing: PGT)といいます。
あなた、あるいはあなたのパートナーがすでに遺伝子検査を受けていてHDの遺伝子伸長のあることが分かっているなら、妊娠中に、またはPGTにより直接判定を受ければ、その妊娠や胚がHDの遺伝子伸長を受け継いでいるかどうかが分かります。
HDの心配がない子どもが欲しい人の中には自分自身は遺伝子検査を受けたくないという方もいるでしょう。このような場合にも選択肢はあります!その場合、同じ検査でもさらに複雑なものが必要になります。というわけで、先ずは一方のパートナーがすでにHD遺伝子検査陽性となっているカップルの場合にどうなるかを考えてみましょう。
着床前診断 (Pre-implantation Genetic Testing: PGT)
着床前診断はHDの心配がない子どもを授かる一つの方法で、妊娠中絶について考える必要もありません。ただ、その過程は長期にわたる骨の折れるもので費用もかさみます。
PGTでは検査室で卵子と精子から胚をつくったのち、その胚を対象にHDの遺伝子検査[訳者注:着床前診断]を実施し、HD陰性のもの[訳者注:遺伝子伸長を受け継いでいない胚]だけを子宮に戻します。
PGTの手順
PGTはIVFに遺伝子検査の手順が追加されたものです。IVFではホルモンを投与し通常より多くの卵子を産生させる状態にします。ホルモン投与では薬剤を体内に送り届けるために複数回の注射を実施することがあります。
その後、複数の卵子を採取して男性から採取した精子を使って受精させます。
受精させた卵子は胚となりますが、それが小さな細胞塊になるまで最大5日間検査室で培養されます。この段階で胚それぞれから細胞を1、2個取り出して遺伝子検査にまわし、その間胚は保存されます。発生初期のこの段階で細胞を取り出しても胚の成長には問題ありません。
HDの発症リスクがないと分かった胚の保存は継続されます。次に、あなたの住んでいる国にもよりますが、発症リスクのない1個あるいは2個の胚が子宮に移植されます。
胚の移植後およそ2週間で、妊娠を確認する血液検査が行われます。移植が成功していれば、その後、妊娠は通常と同じように継続されます。
PGTのマイナス面
排卵を誘発して、卵子を採取し、その卵子を体外で受精させ、胚を子宮に戻すという過程は、時間がかかり、心身ともに大変なものというのが常です。危険性をはらむものでもあり、女性が体調を崩す可能性もあります。
色々なことが上手く運ばないこともあって、例えば、卵子や胚が十分に得られないこともあります。PGTでは双子が生まれる可能性も高くなりますが、その場合、大変なことも多くなり、妊娠や出産への危険性も増します。
そうしたリスクに加えて、PGTの遺伝子関連で不具合が生じる場合もあります。細胞を取り出すときに胚が傷つく可能性もあり、時にはDNA不足でHDの遺伝子検査が上手くいかないこともあります。運が悪ければ胚すべてにHD変異があるということもあり得ます。
1.IVF/ICSI(顕微授精) 2.胚の培養 3.胚の生検
4.遺伝子解析 5.評価および胚の選択 6.胚の移植
PGT(着床前遺伝子検査)の仕組み(図の出典:@gcnotes)
結局のところ、時には移植できる胚が一つしかなかったり、全くない場合だってあります。挙句の果てには、移植後の妊娠が不調に終わることもあります。一般的に、PGTを一回試みてHDの心配がない妊娠に至る確率は20から30パーセントです。この成功率もPGTを実施する生殖医療施設によって異なりますし、様々な要因が絡みます。
女性の年齢が35未満の場合に成功の確率が最も高く、これも子づくりについては早めに考えておくべき理由の一つです。残念ながら、40歳を超えると成功の確率は低くなります。
PGTの費用は?
PGTには高い費用がかかります。およそ20,000ドル(15,000ポンドあるいは18,000ユーロ)です。
通常、PGT/PGD(着床前診断)の費用に医療保険の適用はありません。公的な医療保険制度でPGTを何回か(例えば、英国では3回)まかなえる国もあります。ただ、そうした場合でも回数は国によって異なりますし、子どものいないカップルに限定されている場合もあります。
HDのリスクがない胚が余分にあれば保存が可能ですが、これにも費用がかかり、その額は保存期間によって異なります。
PGTという選択肢を検討しているのなら、お近くの遺伝カウンセリングなどの提供先に連絡を取って、PGT対象者の基準・紹介状・関連費用について相談することをお勧めします。
妊娠中の検査
妊娠中に遺伝子検査をしてこども(胎児)にHDの原因となる遺伝子伸長があるかどうかを確かめることが可能です。これを出生前検査といいます。
胎児の遺伝子検査をするかどうかを決めるのは簡単ではありません。胎児にHD遺伝子伸長があるとの結果が出たら妊娠中絶を行うという了解があって始めてHDの出生前検査は行われるということを知っておくことが重要です。これはとてつもなく困難な決断であり、周りからとやかく口出しできない決断です。
したがって、HDの出生前検査について、また、妊娠中絶をどう思うかについて、妊娠に先立って慎重に考えることが重要です。
妊娠してからだと、出生前検査に関する情報を理解して、そうした重要な決断をする時間は極めて限られています。出生前診断の遺伝子検査は妊娠初期に行わなければならないからです。
出生前検査をして陽性結果が出たのに中絶しないなら、その子が後に遺伝子検査を受けるか否かを選択する権利を奪うことになります。結局のところ、アットリスクの人たちのほとんどは発症する前に遺伝子検査受けるという選択はしないことが多いのです。生まれたときから将来HDを発症すると分かっている場合、大きな困難が様々生じ得ることは明らかです。
また、ほとんどの場合、出生前検査は事前に両親あるいはその他の家族の遺伝子検査が済んでいなければ行うことができません。妊娠後は、こうした両親、他の家族の遺伝子検査をするだけの時間がないことがよくあるのです。
侵襲性出生前検査
最も一般的で信頼性が高いのは絨毛検査(chorionic villus sampling: CVS)という手技で、妊娠初期に実施して胎児の遺伝子を検査します。CVSでは胎盤を少しだけ採取しますが、胎盤は胎児のDNAを反映しています。
CVSは外来ですぐに終わりますが、国によっては局所麻酔をします。経腹超音波で胎盤が子宮壁のどこに付いているか確認しながら、子宮頸部か腹部にごく細い針を刺します。そして胎盤から細胞を少しだけ採取します。
この細胞によってHD遺伝子伸長がないか検査できるのです。遺伝子診療施設によってはCVS遺伝子検査の一環として3種類の一般的な染色体症候群の遺伝子検査をしてくれるところもあります。
CVSは通常、妊娠11週から12週の間に行われます。15週を越えては行われません。CVSを行うに先立って妊娠初期の段階で超音波検査をするよう求められることがよくあります。
この手技の主な合併症は流産のリスクが若干あることです。CVSに伴う流産のリスクについては実施施設それぞれについての情報がありますので、詳細を知りたければお近くの施設にご連絡ください。
羊水穿刺も侵襲性出生前検査の一つです。CVSと似ていますが、この技法では胎盤ではなく羊水を採取します。これが行えるのは16週目からです。したがって、検査結果が出るのは妊娠週数の進んだ頃になり、妊娠中絶をめぐる決断がさらに難しくなる可能性があります。
遺伝子検査が陽性ならば、全身麻酔をしておよそ12週から13週までに中絶を行うのが普通だと考えられますが、これはその国の法律によります。残念ながら、この中絶を行うのに時には順番待ちが必要となります。
陣痛促進剤を使うことで中絶をもっと後に行う国もあるかもしれませんが、これについてもそういう選択ができるかどうかはその国の法律次第です。
非侵襲性出生前診断(Non-invasive Prenatal Diagnosis: NIPD)
非侵襲性出生前診断は妊娠中に行われる比較的新しい検査方法です。侵襲性のある検査は行わず、それによってわずかながらある流産のリスクを回避するわけです。侵襲性検査では胎盤や羊水の採取を行いますが、NIPDでは妊娠している母体から血液を採取します。この検査では母体親の血液中に漂っている胎児由来のDNAの微小断片を調べます。
NIPDを行えるのは妊娠10週あたりです。NIPDでは通常、妊娠に先立って当該施設における一連の検査が必要です。家族を増やしたいと考えているカップルからのサンプルの採取が求められますし、HDを発症している血縁者からのサンプルの採取が必要になることもあります。したがって、この選択肢が自分たちに合っているかもしれないと思うなら、前もって計画を立てておくことが重要です。
NIPDは施設を選ばず利用可能なわけではないでしょうし、検査の信頼性にも差があると考えられます。現時点では、NIPDでHDを受け継いでいる可能性があるという結果が出ても引き続き侵襲性検査を受けてその結果が正しいかを確かめることになるでしょう。それなしで中絶の処置を予約することはできません。NIPDが適当でない理由はいくつかあって、例えば双子を妊娠している場合などがそうです。
自分が遺伝子検査を受けたくないなら?
アットリスクのパートナー自身が検査を受けなくても、HDの心配のない子どもを授かる方法があります。
HDの祖父(母)、HDでない祖(父)母、アトリスクの親、高リスク、低リスク
除外検査の仕組み: HDの祖父(母)からのDNA断片を受け継いでいる胚は移植候補から除外する (図の出典:@gcnotes)
この特別な工夫は除外検査や非開示検査と呼ばれる方法で、準備・計画がさらに求められますが、状況によってはそれができないこともあります。したがって、この選択肢が自分たちに合っていると思うなら、早くから専門家の助言を得てください。
除外検査の仕組み
除外検査では少なくとも3人から血液を採取します。家族を増やしたいと思っている2人からそれぞれ、そして理想的にはHD発症のリスクがある人の両親からそれぞれ。HDを発症している親からの血液採取がないと、時にはこの手法が選択肢にならない場合もあるでしょう。
人はみな両親それぞれからHD遺伝子の片方ずつを受け継ぐことが知られています。HD患者である祖父(母)の2つのHDの遺伝子の片方は通常の【訳者注:伸長していない】もの、もう片方は伸長したものです。この2つの祖父(母)由来の遺伝子をAAと名付けましょう。このどちらが祖父母の子に受け継がれているかは分かりません。そしてその人は検査を受けてそれを明らかにすることは望んでいないのです。
患者ではない祖(父)母のHDの2つの遺伝子は両方とも通常の長さです。この2つの祖(父)母由来の遺伝子をBBと呼びましょう。
アットリスクの人ではAとBの組み合わせとなっていますが、Aが伸長している遺伝子である確率は50%です。
アットリスクの人が遺伝子検査を受けて自分の抱えるリスクを明らかにすることなく家族を持ちたければ、出生前検査かPGTの時に除外検査を使用することで胎児や胚が患者の祖父(母)からA遺伝子を受け継いているか患者でない祖(父)母からB遺伝子を受け継いでいるかを確かめることができます。こうして分かるのはその妊娠がHDを受け継いでいる可能性が高いか低いかです。
重要なのは、除外検査では遺伝子の由来する祖父母を特定するのであって、伸長したHD遺伝子を受け継いでいるかどうかは分からないということです。もしそれが分かるのなら、アットリスクの親がHD遺伝子を受け継いでいるかどうかの遺伝子検査結果が分かることになります。避けようとしているのはそのような状況なのです!
マイナスの側面として、HDを受け継いでいる可能性が高い胎児や胚のなかにはHD変異のないものもあり、したがって、そもそもHDのリスクがないと思われる妊娠を中絶したり胚を廃棄したりする可能性があります。
非開示PGT
非開示にするというのは、PGTにひと工夫して、アットリスクの人が自分の遺伝的状態を知ることなくHDの心配のない子どもを授れるようにすることです。この選択肢はどの国でも利用できるとは限りません。したがって、お近くの病院の遺伝診療科に連絡を取ってこれがお住まいの地域で利用できる選択肢であるかどうかを確かめることが大切です。
パートナーがアットリスクであるカップルが非開示PGTを受けることにした場合、アットリスクの方の血液を採取してHD変異がないか遺伝子検査をしますが、その方には結果を知らせません。また、そのアットリスクの方に接触する医療関係者などにも結果は知らされません。知っているのは生殖医療を専門とする検査室の人たちだけです。
さて、PGTが始まり、卵子を採取して胚が作られます。もしアットリスクの人には秘密にした遺伝子検査結果でHDの遺伝子伸長があると分かれば、胚のHDの遺伝子検査が行われ、変異のない胚だけが移植されて妊娠に向かいます。
カップルは採取した卵子の数も、受精に成功した受精卵の数も、移植した胚の数も知らされません。もしHD遺伝子伸長のない胚がなければ、そこで終了し、カップルには受精に失敗したとだけ伝え、その理由は伝えません。
IVF(体外受精)が失敗したとしても様々な理由があるので、妊娠が成立しなかったとしても、そのことをもってアットリスクの人にHD遺伝子伸長があると解釈することはできません。
その他の選択肢
HDの心配のないこどもをもうけるための方法には、ドナーの卵子あるいは精子をアットリスクの人の卵子や精子の代わりに使うという方法もあります。ドナーの助けを借りてこどもをもうけることを決心するのは容易なことではありませんが、妊娠中絶のことを考える必要を回避できます。発症前検査でHDの遺伝子伸長のあることが分かっている人でも、検査を受けるつもりのないアットリスクの人でも可能です。
どんな選択肢でもそうですが、これも一筋縄ではいきません。生まれた子どもはアットリスクの親とは遺伝的な関係がありません。そして、両親はいつどのようにしてそのことを子どもに伝えるか慎重に考える必要があります。親は子どもと遺伝的なつながりがなくても愛情に満ちたその役割を完璧に果たすことができます。この道を行くと決めた人たちが利用できる支援はたくさんあるので、決断する前に前述したことについて話し合いをしておくことも可能です。
養子をとることを考えるカップルもたくさんいます。2人の内の一方がHDのアットリスクなら養子をとることが難しくなるという場合も多く見られます。これはその家族にHDという疾患があることを理由とするもので、養子斡旋機関は子どもが安定した家庭に行けるようしなければならないからです。けれども、評価は個々のケースに応じて行われますので、養子縁組も一つの選択肢として考える価値はあります。養子がだめでも、アットリスクのカップルも里親にはなれるかもしれません。というのも、里親は選択肢として短期的なもので、一回の里親の期間は週単位あるいは月単位だからです。たとえ短くても里子と過ごす時間はその子の人生に前向きな影響を与えられることがよくあります。
LGBTQIA+の場合は?
これまで述べてきた選択肢はすべて、HDの家族歴があるLGBTQIA+のカップルが新しい家族を望んでいる場合にも利用できるでしょう。ただ、精子・卵子提供者や代理母が必要な場合、それらを見つけるのにはもうひと手間かかるでしょうし追加費用や法的手続きも余分に生じるでしょう。
あなたとパートナーにふさわしい家族計画の選択肢を利用しようとするのに際してLGBTQIA+であることが妨げにならないと考えられる国もたくさんあります。家族計画の手法に関する具体的な情報で、家族を作りたいと思っているLGBTQIA+の人たちに利用可能なものがあなたの国にもあるかもしれません。
まとめ
新しい家族を作りたいと思っているアットリスクの人たちに利用可能な選択肢はたくさんあります。
新しい家族を作るために遺伝子検査を受けることを誰もが選ぶわけではありませんし、それはとるべき道として全く正当なものです。
自分の子どもがHDを受け継ぐリスクを排除したいと思う人でも、自らのリスクを知る必要があるかというと、そうではない場合があります。HDを受け継いでいるか直接に遺伝子検査を受けるのは、アットリスクの親の検査結果が分かっていてHD遺伝子伸長があると知らされている場合です。一方、アットリスクのカップルが自分の遺伝子検査結果を知りたくなければ除外検査や非開示検査が行われます。
着床前遺伝子検査(PGT)では検査室で胚が作られ、そのHDの遺伝子検査される、もしくは娠後に胎児の出生前検査が行われますが、いずれでもアットリスクの人に直接結果を開示する、開示しない、両方可能です。と非妊娠中の検査は、絨毛穿刺(CVS)による侵襲性のある検査か非侵襲性の検査(NIPD)ですが、いずれの場合も、HDを受け継いでいた場合に妊娠を中断中絶することを考えている場合にのみ選択可能な選択肢となります。
アットリスクのカップルが利用できる選択肢としては他にも提供卵子・精子の使用や養子縁組・里親などがあります。
お住まいのところで利用可能な選択肢を正確に知り、自分にふさわしいと思われる選択肢を探すのには遺伝カウンセリングによる専門的アドバイスが役立ちます。遺伝カウンセラーへの連絡方法については、お住いの国のHD協会がお役に立てるでしょう。人生では何かにつけそうですが、前もって計画を立てることとすべての選択肢を知っておくことがポイントです。
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