2023年6月、国会で通称「ゲノム医療法」が可決、成立し、施行されました(「良質かつ適切なゲノム医療を国民が安心して受けられるようにするための施策の総合的な推進に関する法律」(令和五年法律第五十七号、以下ゲノム医療法)。
この法律は、2018年に発足した超党派の「適切な遺伝医療を進めるための社会的環境の整備を目指す議員連盟」によって起案された議員立法です。私は、2022年秋から始まった、学術団体、患者・障害者・家族関連団体、産業関連団体らによる早期成立の要望活動の事務局を担当しました。JHDNにも賛同団体になって頂きました。最終的に300団体を超える団体の賛同を頂きました。
ゲノム医療法の基本理念は、①世界最高水準のゲノム医療を実現し、その恵沢を広く国民が享受できるようにすること、②生命倫理への適切な配慮をすること、③得られたゲノム情報の保護が十分に図られるとともに、ゲノム情報による不当な差別が行われないようにすることです(第3条)。
また、国には、ゲノム医療を推進する施策を策定し、実施する責務(第4条)のほかに、生命倫理への適切な配慮や適正なゲノム情報の取得、管理、開示のため、医師や研究者が遵守すべき指針や施策の策定(第14条、第15条)、さらにゲノム情報による不当な差別など生じ得る課題への適切な対応に必要な施策の策定があります(第16条)。
しかし、ゲノム医療法は、ゲノム医療を進める施策の骨格を示した法律ですので、今後、基本計画が策定されますが、その内容がとても重要です。例えば、ゲノム医療法は、差別の禁止を打ち出していませんので、基本計画には、差別の実態調査や定義などが含まれる必要があると考えられます。これからも注目して下さい。
<関連情報>
良質かつ適切なゲノム医療を国民が安心して受けられるようにするための施策の総合的かつ計画的な推進に関する法律」に関する提言について (令6年4月26日 日本医師会・日本医学会)
2023年6月21日 第10回議連総会にて法案成立の報告。挨拶する尾辻秀久会長(参議院議長)