発行日 2022年10月
編 集 JHDN事務局
発行元 日本ハンチントンネットワーク 

目 次

◇ ごあいさつ + オンライン交流会のご案内
 オンライン交流会・総会の報告
◇ 新入会者の自己紹介 (会員限定)
◇ 会員だより ♧ みんなの近況(会員限定)
◇ HDBuzz
◇ 【保険業界での遺伝情報の扱いについて】武藤香織

ごあいさつ

 加瀬 利枝(あにどる)

 みなさん、こんにちは。お元気ですか? 今年もまた大雨や大きな台風で大変な水害が発生してしまいましたね。被害に遭われた皆様には心よりお見舞い申し上げます。これも人間が引き起こした地球温暖化の影響の気候変動でしょうか。環境を守ることも私たちの義務です。
 そして、JHDNの会員さんと、そうでないみなさんも、ともに平和で心穏やかな生活ができますように、お手伝いできるように努力しています。心が元気でありますように。

オンラインWEB交流会のご案内


日時:2022年12月18日(日)14時~16時

プログラム
〇講演会「介護と福祉サービス」

〇グループワーク
※ 電子メールアドレスを事務局にお知らせくださっている方の中で、事務局からの電子メールが届いていない方は、members@jhdn.orgからの電子メールを受け取れるように、フィルターを解除してください。

WEB交流会の報告①  

マキ

 2022年度第1回目の交流会は5月14日(土)14時-16時にZOOMアプリを使って、インターネット上の会議室に集まりました。前半は講演会、後半はグループに分かれておしゃべり会の2部構成です。参加者は講師やボランティアを含め29名(うち初参加2名)でした。
 講演会では大阪急性期・総合医療センター/大阪難病医療情報センターの難病医療コーディネーター看護師の野正佳余(のまさかよ)様より「ハンチントン病を患う人の入院・転院調整とそのポイント~難病相談の事例から~」というテーマでお話をいただきました。______________________

WEB交流会の報告②

2022年度オンライン総会の報告            マキ

 2022年7月3日にオンラインで36名の会員や支援者らが集まり、総会が開催されました。
うち2名が初参加でした。
 まず、総会では昨年度の活動報告・会計報告を行い、昨年度決算と次年度予算の承認を受けました。コロナの影響で集合形式での総会開催ができていないことや、メールやホームページなど電子化により、会員に情報を十分周知できていないことを心配するご意見もありました。引き続き、電子媒体だけでなく、紙媒体も併用しながら会員周知を図っていきたいと思います。また京都大学大学院の遺伝カウンセラーコースに所属されている大澤春萌さんからインタビュー調査への協力依頼があり、調査内容について説明していただきました

「遺伝子治療に関する先日のプレスリリースを紐解く」より抜粋

執筆:レオラ・フォックス博士、サラ・ヘルナンデス博士  編集:ジェフ・キャロル博士

 この記事はHDBuzzのホームページに2021年8月16日に掲載された英文記事を会員有志が日本語に訳したものの抜粋です。
(出典:https://en.hdbuzz.net/310)

ボイジャーセラピューティクス社は遺伝子治療における送達(薬を投与するプロセス)に新たな技術を追求することとなり、予定していたHDの臨床試験を取りやめました。ただ、長期的にはこれによって、もっと侵襲性の低い薬ができるようになるかもしれません。また、他にもたくさんの企業がHDの遺伝子治療に取り組んでいます。

遺伝子に関する知識の簡単なおさらい
DNAは設計図になぞらえることができます。すなわち、個体内にあるあらゆる細胞の遺伝子レベルにおける基本設計図なのです。この基本設計図を真新しい状態に保つため、細胞はタンパク質を作るにあたってDNAのコピーを作業用に作成します。このDNAのコピーがRNAです。RNAはコピーにすぎないので、ぼろぼろになりはしないかとあまり気づかうこともなく使い倒すことができます。ぼろぼろになれば、細胞は設計図のDNAからコピーのRNAをまたすぐ作ることができます。
 科学者はこうした知識をテコに巧妙な方法を編み出すことで、自らが着目しているタンパク質を細胞にたくさん作らせたり、あまり作らせないようにしたりしているのです。

ハンチンチン低下への応用
 HDの場合、関心は細胞に損傷を与えるハンチンチンタンパク質の生成を減らすことにあります。これがいわゆるハンチンチン低下です。ハンチンチン低下には二通りの方法が可能となります。
1)生成されるRNA(=コピー)を破壊します。ただ、DNA(=設計図)はそのままにしておきます。これはアンチセンス・オリゴヌクレオチド(ASO)がよって立つ戦略で、ロシュ社やウェーブ社が臨床試験で試していたASOなどがそうです。
2)DNA(=設計図)からのメッセージを一部変更して、DNAをRNAにコピーできなくしたり、当該RNAの破壊に役立つ新たな指示を追加するようにしたりします。「遺伝子治療」と言う場合にはこのアプローチを指します。設計図自体は変えず、設計図から作られるものを変えます。

 上記の二つの一番大きな違いは、RNA(=コピー)を破壊するにとどまる場合は投与を繰り返す必要があることです。細胞には依然としてもともとのDNA(=設計図)がありますから、新たなRNA(=コピー)が作られ続けます。したがって、そのコピーを常に破壊しない限り、ハンチンチンタンパク質が依然として生成されることになります。繰り返し投与するのは億劫に思えるかもしれませんが、このタイプのアプローチの場合、要するにRNAをターゲットにするだけの薬なので、その効果は必ず最終的には消え去るわけです。これによって安全面でのメリットはより大きくなります。
 
 ハンチンチン低下における遺伝子治療アプローチ(ユニキュア社やボイジャー社が取り組んでいるアプローチもそうです)では、ハンチンチンを標的とするに際し脳細胞に対して遺伝子上の指示を一度伝えるだけです。その後この指示に従って脳細胞はハンチンチン生成に干渉することができるRNA分子を作り続け、ハンチンチンタンパク質レベルを下げることになります。これは一回限りで完了するタイプのアプローチなので、繰り返しの投与は必要ありません。けれども、注意すべきは、このアプローチの場合、ハンチンチン低下のせいで他の影響が生じたとしても後戻りはできないということです。
 現時点でHDなどの脳疾患の遺伝子治療を行おうとすれば脳外科手術が必要になります。というのもDNAに手を加えるそうした薬は脳関門を突破することができないからです。この大きな制約こそ、ボイジャー社が回避しようとしていたものなのです。

開発途上にあるその他の遺伝子治療薬
 HDの遺伝子治療分野のトップバッターはユニキュア社で、ウイルス(AAV)を使った治療薬(AMT-130)を開発中です。この治療薬の最終的な目的は、脳細胞に指示を伝えて特別なRNAを作らせ、これによってハンチンチン遺伝子に対応したRNAを見つけ出して破壊することです。このようにして、遺伝子治療薬はハンチンチン低下を恒久的にもたらすよう使用することができます。ユニキュア社は動物による研究を長年慎重に行ったうえで安全性試験を開始しました。

 ウイルスを使ったハンチンチン低下の遺伝子治療薬の開発で臨床前の段階にある企業としてはさらにスパーク、サノフィ、アスクレピオスバイオ製薬(AskBio)などがあります。

 ハンチンチン低下の遺伝子治療アプローチにはジンクフィンガーという新たな手法を使うものもあります。最近になって日本の製薬大手武田がサンガモ製薬(もともとこの薬を開発したのはこの会社です)からこのHD事業を引き継ぎました。ハンチンチン低下におけるこのアプローチの主たる利点は、変異ハンチンチン遺伝子だけを選んでそのスイッチを切ることができる点で、HD患者のほぼすべてが持っている正常な方の対立遺伝子は見逃してくれるのです。

今回のポイント
 脳疾患への遺伝子治療の適用というのはHDとの闘いの試みの中でも最も最先端のアプローチです。新たな分野ではそれがどのようなものであってもいえることですが、ひとつの治療法に至る道には多くの紆余曲折が必ずあります。ボイジャー社が先日発表した最新情報は、その典型的な例です。今年中に予定されていた臨床試験が実施されないことになったのは確かに残念ですが、新たに開発した技術をボイジャー社がHD患者やその家族のために使おうとしているのは素晴らしいことです。他の企業も遺伝子治療の領域などで精力的に取り組んでいることからも分かるように、多くの本当に素晴らしい戦略がHDという課題に適用されているのです。

保険業界での遺伝情報の利用に関する共同声明と差別禁止法制に関する新たな動き

武藤香織


この春、長い間、国内でルールが決まっていなかった、遺伝情報に基づく差別に関して、新たな動きがありました。ここでは、今日まで続く様々な動きをご紹介します。

日本医学会と日本医師会による要望
2022年4月6日、日本医学会と日本医師会は、合同で記者会見を行い、「遺伝情報・ゲノム情報による不当な差別や社会的不利益の防止」についての共同声明を発表しました。共同声明では、様々な疾患を対象に遺伝学的検査やゲノム解析が進められている一方、遺伝情報を用いて本人や血縁者にとって不当な差別や社会的不利益を受けるリスクが放置されていると指摘しています。そのうえで、患者・家族だけではなく、現時点では遺伝との関連を自覚していない多くの健康な方々にも不安が広がる恐れがあるとして、次の3点の事項を要望しました。

① 国は、遺伝情報・ゲノム情報による不当な差別や社会的不利益を防止するための法的整備を早急に行うこと、及び関係省庁は、保険や雇用などを含む社会・経済政策において、個人の遺伝情報・ゲノム情報の不適切な取り扱いを防止した上で、いかに利活用するかを検討する会議を設置し、わが国の実情に沿った方策を早急に検討すること
② 監督官庁においては、遺伝情報・ゲノム情報を取り扱う可能性のある保険会社等の事業者及び関係団体に対し、遺伝情報・ゲノム情報の取り扱いに関する自主規制が早急に進むよう促すとともに、その内容が消費者に分かりやすく適正なものとなるよう、指導・監督を行う仕組みを構築すること
③ 遺伝情報・ゲノム情報を取り扱う可能性のある保険会社等の事業者及び関係団体は、遺伝情報・ゲノム情報の取り扱いについて開かれた議論を行い、自主的な方策を早急に検討し公表すること

<すべてのお問い合わせ先>
〒108-8639 東京都港区白金台4-6-1
東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター 
公共政策研究分野内 JHDN事務局
事務局への電子メール jhdn@mbd.nifty.com
相談メール jhdn@mbd.nifty.com

<会費・寄付の振込先>
ゆうちょ銀行口座 記号10090 番号72610961 
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三菱UFJ銀行口座 高田馬場支店 (普)1348857
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