JHD(若年性HD)の症状について、保護者の経験などからまとめました。医学的な監修は得ておりませんのでご承知おきください。JHDは20歳になるまでに発症し、全HD患者のうち5%~10%に見られます。JHDではほとんどが父親からの変異遺伝子に由来しています。JHDでは進行がはやく、治療方法はなく、もっぱら患者の日常生活を支援しながら、生活の質を保つことが重要になります。
JHD(若年性ハンチントン病)の症状について
大きく区分すると以下のような症状が見られます。
- バランス感覚の喪失
- つま先での歩行・走り
- 癲癇の発作*不随意運動
- 体の硬直・緊張
- 言葉の発達の遅れ
- 自慰行為
- 歯ぎしり
- 情緒不安定・パニック・自傷行為
- またこれ以外で女の子の場合、生理が始まるとホルモンの関係で陰部が腫れることがあります。)
情緒面について
情緒面においては、症状の出る時期はまちまちで、どちらかというと男の子の方に重い症状が現れるようです。JHDのこどもたちは、シンプルな情報については理解できますが、情報の断片を関連づけて理解し、それに対応することができないという特徴があります。本人が納得するまでゆっくりと何度も同じ事を説明してあげることが大事です。これは自閉症と非常に似ています。
この他、特に男の子に強く出るものとしては、泣き喚く、壁に頭を打ちつける、噛み付く、物を投げるなどの行動や、自慰行為、自傷行為も見られます。
また緊張を伴う場が苦手でパニックを起こしてしまう子どももいます。その他協調性にも欠けるため、集団生活を余儀なくされる幼稚園、学校などでは特徴的な言動について担任にあらかじめ説明し対応をお願いして、パニックを最小限に食い止めることが必要です。
JHDのこどもたちは学校が大好きです。集団生活は苦手であっても、人と触れ合うことは大好きです。勉強も彼らの能力にあった内容であれば集中して取り組むことも出来ますが、持続性に欠けるため短時間で要領よく教えてあげることが大切です。お勉強だけに限らず、ひとつのことをやり終えたあとはたくさん褒めてあげること、これはさまざまなことに意欲を発揮させ、持続性を養う訓練につながるという上で、とても大事なことです。
運動面について
JHDの初期症状は、よく転ぶといった症状が多く見られます。バランス感覚が劣ってしまうため転びやすくなるのですが、転倒時に手をつけません。したがってそのまま頭を強打するので、切っては縫うということが頻繁になります。ただ不思議なことに、こういった痛みはあまり感じない一方で、注射や点滴の針には敏感です。転んだ時に手が前に出ないと感じたら、ヘッドギアを装着させるなどの対応が必要です。
てんかん
その後てんかんの発作が現れます。正確にはミオクローヌスてんかんという、大人のHD患者にはみられない症状です。突然、そして頻繁に、一度発作がくるとその後は立て続けに襲ってきます。
不随意運動・硬直
てんかんの発作後に、手足の不随意運動や、硬直がひどくなってきます。不随意運動や硬直が起こると、高熱につながります。熱は40度を超えるとなかなか下がらず汗も大量にかくため、硬直や不随意運動が始まったと同時に、氷枕などで冷やしてあげて下さい。これらを回避する方法として、誘眠剤(トリクロリール)などを使用し、脳を眠らせてしまう方法があります。
車椅子の申請
発症が認められてから、およそ一年以内に手足の痙攣が激しくなります。その動きは次第に大きくなり、やがて歩くことが難しくなり、車椅子の生活となります。ヘッドギアや車椅子を作成するときの注意として、病気の進行が異様に早いために、申請した時と完成時の症状が違っていることを、考慮にいれておかなければなりません。手帳が届くころの症状を予測して医師に意見書を書いて貰うことが大切です。車椅子も完成する時期にどのような症状になっているかを考慮にいれたタイプのものを注文するようにして下さい。
食事について
食事の面では、発症してから4〜5年経過した頃から、飲み込む力が急速に低下していきます。そのため、気管への誤嚥を防ぐ意味で経管栄養を併用する必要性が出てきます。しかし、個人的に長期間の経鼻チューブ使用はお勧めできません。というのは、その不快さという理由の他に、食欲が激減してしまうのです。こどもたちの負担を軽くしてあげるため、そしてJHDのこどもたちの体力を考え、早めの胃ろうの手術をすることをお勧めします。手術のタイミングにとても注意が必要ですので、経鼻チューブの必要性を感じた頃に、胃ろうの手術をすることが望ましいでしょう。胃ろうを造設しても口からの食事は可能です。
JHDのこどもたちをささえる人へのメッセージ
JHDの子どもたちを持った親は、その病気の進行の早さに脅えて、戸惑いと不安の日々を過ごされると思いますが、誰よりも恐怖を感じているのは子どもたちであるということを忘れないでほしいのです。
歩けなくなる、話せなくなる、食べられなくなるという世界の中でも、彼らは自分の感情を表現しようと笑顔を作ってくれています。症状と闘う懸命な子どもたちの姿を見ると、何としてでも病気を止めてあげたい、と親は必死になってしまうことでしょう。
そんな時決してうろたえず、しっかりと子どもたちを受けとめ、思いっきり抱きしめてあげることがとても大切です。子どもたちは 自分の体が壊れていくという恐怖に日々脅えて行く中で、親の変わらぬ愛情を感じることによって HDと共に歩いて行くという強さを身につけていき、そして親は、JHDの子どもたちから生き抜いていく強さを学んでいくのではないでしょうか。
子どもたちが一生懸命に生きようとする姿から決して目を逸らさず、正面から見据えることができた時、子どもたちの素晴らしさがより一層理解できる、そう確信しています。
そして何よりお願いしたいのは,出来るだけ頻繁に病院と連絡を取り合い、信頼出来る医師に定期的に診てもらうことを心がけて頂きたいのです。進行の早いJHDの子どもたちの経過を、親しか知らない状態は大変危険です。
子どもたちの症状を医師が把握していれば、急変にも対応でき、一命を取りとめることが出来ます。自分だけで抱え込まず、孤立した介護を避け、病院と連携プレーをとっていく方法が、JHDのこどもたちを恐怖や苦痛から遠ざける最善の策であると考えます。上手に病院を利用し、多くの目でこどもたちを見守っていくことが、親の負担を少なくする意味でも、望ましいことではないでしょうか。
我々JHDチームが微力ながら、応援させていただきます。共に頑張っていきましょう。